アイシン産業株式会社

仕事インタビュー

身近にある“粉”の世界!村上社長が語る、これからの粉粒体の未来とは


皆さんこんにちは。「『粉』を操る技術でお役に立ちたい」という気持ちから1972年に創業し、粉に関わるすべてのお客様のために、最適な粉粒体ハンドリング機器・装置・設備を提供しているアイシン産業株式会社の広報担当です。


現在、アイシン産業では一緒に働く仲間を募集しています!


今回は社長の村上に、アイシン産業が扱う「粉粒体」とは一体どんなものなのか、生活の中のどのような場面に関わっているのか、どういった可能性を秘めているのかを語ってもらいました。



■“粉粒体”とは「細かい固体」のこと


まずは簡単に自己紹介をお願いします!

代表取締役社長の村上徹(むらかみ・とおる)です。


大学の工学部化学工学科卒業後に、工場の作業環境改善のための集塵設備、粉粒体ハンドリング設備のエンジニアとして23年間経験を積んだ後、アイシン産業に転職しました。社会人になってからずっと、粉に関わる仕事に携わっています。


普段生活をしている中ではあまり聞きなじみのない「粉粒体」ですが、一体どういうものなのでしょうか?

この世の中に存在する物質には気体・液体・固体という3つの状態しかないのですが、その中の固体を細かくして集合体にしたものを「粉粒体」と呼んでいます。つまり粉とか粒とか「細かい固体」ということです。

氷を丸ごとかじると食べにくいですが、「かき氷」のように削ったり砕いたりすると食べやすくなりますよね。産業界でも同じことが言えて、大きな固体のままでは溶かしたり混ぜたりしにくいので、細かい粉粒体にして扱っています。


粉粒体と粉は、正確には別物なのですか?

いえ、同じものです。粉粒体が一番レンジの広い呼び方になります。


粉粒(こなつぶ)という呼称がありますよね。粉はどちらかというと細かいもの、粒はどちらかというと粗めのものを思い浮かべるかと思います。それらを総称したのが粉粒体です。


ただ、粉と粒の境界線にはさまざまな説があります。直径0.1mmを切った小さいものの集まりを粉体と呼ぶ、くらいがちょうどいいのではないかと考えています。

粉粒体はどのように作られているのでしょう?

粉粒体の作り方と1粒の大きさは、用途やものによりいろいろあります。


例えば、石灰石の場合、まずは塊を採掘することから始まります。この時点ではまだ“岩”ですよね。岩の塊では工業的には使えないので、細かくしなければなりません。


石灰石の場合、用途として一番使われるのが「セメント」。こういった天然の鉱物は、機械で砕いて粉粒体にしていきます。粉砕することで扱いやすくなり、再度固めることでコンクリートとして使うことができるようになるという仕組みです。


砕く方法にもさまざまあり、かき氷機のように削りながら砕いていくものや、ハンマーで叩きながら崩していくものもあります。また、気流粉砕機といって、非常にスピードの速い空気に混ぜて細かくする機械も存在します。


粉砕の他には、海水から食塩を作る時のように、煮詰めたり水分を飛ばしたりして結晶にしていく粉粒体の作り方もあります。上白糖やグラニュー糖もその例ですね。


また、抹茶は乱暴に粉砕すると熱で香りが飛んでしまうので、石臼を使ってゆっくりすり潰すことで粉粒体にしています。

■身の回りにあるほとんどの物に“粉”が関係している!

では、粉粒体は人々の日常生活にどのように関わっているのでしょうか?


実は、日常生活において身の回りにあるほとんどの物は、その形になる前に粉が関係しています。


例えば、ペットボトルや衣類、寝具に原料として多く使われているポリエステルは、粉粒体樹脂原料です。石油から得られるテレフタル酸とエチレングリコールを化学反応させてつくられます。また、石油から得られるナフサからはポリエチレン樹脂がつくられます。これらが樹脂ペレットやビーズ(=粉粒体)の状態で扱われ、その後加熱・成形されてプラスチック製品になります。


また、毎日使う歯磨き粉には歯を白くする研磨剤の粉が含まれていますし、ペーストが入っているチューブや歯ブラシも粉粒体の樹脂原料から作られています。


そして、手軽に飲める粉末コーヒーも、本格的に淹れるコーヒーも粉粒体のひとつ。言ってしまえば、焙煎した豆を買ってミルで挽くのは一種の粉砕です。

他には、メイクをする時に使う化粧品にも、公共交通機関の車両にも、乗車するために使うICカードにも、EV自動車のリチウムイオン電池にも、パソコンにも、多くの粉体原料が使われています。なかなか意識することはないと思いますが、粉粒体なしでは私たちの生活は成り立ちませんし、工業製品を作ることも出来ないのです。


今や生活に欠かせないスマートフォンや、発展を遂げるEV自動車に使われるリチウムイオン電池も原料は粉体なんですね。

そうなんです。中でもEV市場は、これからさらに重要になってくると捉えています。

ただ、リチウムイオン電池を活用していく上では廃棄物の問題が出てきます。環境面においても安全面においても簡単に捨てられませんし、高価で希少なリチウムが入ったまま廃棄は出来ません。つまり、リチウムイオン電池のリサイクルが必要となります。

そしてそれは、人手を使って一つひとつ分解していくのではなく、機械で粉砕した後にいろいろな原材料に分けていくことになります。粉砕するので粉粒体の扱いとなるわけです。要は、粉粒体の技術で成分を分け、次の工程に運んでいく必要があります。これは粉粒体の“ハンドリング”になりますので、EVを含めてリチウムイオン電池においては、こういった面も含め、粉粒体の分野でまだまだ仕事がたくさんあると考えています。

■新たな工業製品、新たな領域には必ず“粉粒体”の課題がある


では、粉粒体の世界において、アイシン産業はどのような場面で関わっているのでしょう?


アイシン産業が一番得意なのは、粉を使う工場のプロセスの中にある、例えば、混合機や乾燥機などの粉体装置間の「繋ぎ」部分なんですよね。

例えば、Aの粉とBの粉を放り込んで“混合”した後に次は“ふるい”の工程に進むとなった時、混合装置からふるい装置までどう運ぶかが問題となりますよね。人手を使っては運べないので、混合した物をある一定の量で供給する必要があり、その際に弊社のロータリーバルブを使うことになります。

粉粒体機器・装置メーカーは、粉砕機専門・ふるい機専門など分業がなされており、全部網羅することはなかなか難しいのが現状。弊社も混合機や粉砕機のごく一部を行いながら、メインとして各工程の繋ぎを担っているので「ハンドリング」が我々の強みだと思っています。


生活に欠かせない存在である「粉粒体」を活用し、これからどのような未来を創っていきたいと考えていますか?


世の中が変化していくと、必ず新しい工業製品が生まれます。まだまだ日本ではこれからすが、今後、3Dプリンターも普及していくでしょう。


ヨーロッパにおいては、既に自動車の交換用パーツを注文に応じて3Dプリンターで作っているんです。そうすれば、パーツセンターに大きな倉庫は要りません。ゆくゆくは、日本でも産業の一部の装置として組み込まれていくでしょうし、それも我々が担う仕事になっていきます。というのも、立体形状を形作るインクにあたる部分は粉体だから。新しい試みが出てくると、それに必ず粉粒体の課題がついてくる。

そして、現在サブミクロンという領域の研究が進んでいます。サブミクロンとは、千分の1mm未満のこと。ミクロンの下のナノと呼ばれる単位の世界です。微細な粉体で、もはや目に見えない領域ですが、そういう世界でも粉体をどのように扱うかは課題になってくるわけです。従来と異なる物質の性質が生まれ、さまざまな産業の発展に寄与していくと思います。その中で、私たちも新しい挑戦をしていきながら社会の発展に貢献していきたいと考えています。


そんな未来に対し、アイシン産業はどんな風に関わっていこうと考えていますか?

粉粒体と一口にいっても、これまで話したように種類がさまざまあるので、同じ物質を扱う場合でも、粒の大きさが1mmの物と10ミクロンの物とでは扱いが全く変わります。それを扱う機械をオーダーメイド生産するのが私たちの仕事になります。


そして、どのような製造業においても、粉粒体を扱う工程がある以上、アイシン産業の経験と技術、製品が役立つのは間違いないです。なので、小さな企業ではありますが、粉粒体技術を通して、経営理念にあげた「平和かつ豊かな世界創造に貢献する」ことができると思っています。


粉はとても難しい分野です。我々はまだ50年ではありますが、さまざまな失敗もしながら実績を積み、今があります。

段々と生活のレベルが上がってきている新興国において、「プラスチック製品が欲しい」「加工された物が食べたい」といった需要が高まった際に、工場の建設や操業で絶対に役に立てるという思いから、海外法人を作ったという背景があります。ですので、最終的には日本に限らず、新興国が豊かになっていく手伝いもできたらいいなと考えているところです。


最後に、アイシン産業への転職を考えている方にメッセージをお願いします。


定年までひとつの会社で勤め上げようと考える人が少なくなっている中、やはり自分の価値をどれだけ上げられるかに興味を持っている方が多いと思います。


あらゆる製造業において粉粒体が使われているのに、粉粒体に精通しているエンジニアは非常に少ないのが現状。日本を代表する大手エンジニアリング会社においても粉粒体プロセスを熟知している技術者は不足していると思いますので、粉粒体に関する経験を積めばきっと活躍の場があるはずです。


幅広い製造業で必要とされる粉粒体の技術スキルをアイシン産業で身につけ、活躍してもらいたいです。


そして、弊社は2025年度から次の長期経営計画が始まります。お客様にとっても社員にとっても、もっと魅力ある中小企業を目指していますので、共に変わっていきたいと思う方にぜひ来てもらえたらうれしいです。